押忍!三浦ベイ輔です。
ここまで貯金6の2位と優勝を狙える位置にいるベイスターズ。
そのベイスターズのブルペンを支え、大車輪の活躍を見せているのは上茶谷大河選手です。
今年から中継ぎに配置転換され、役割が大きく変わったここまでの実績は
防御率:0.77
K%:23.2
WHIP:1.03
FIP:2.95 (2023/6/6時点)
と素晴らしい実績を残しています。ちなみに上記指標はいずれもキャリアハイです。
劣勢の展開で上茶谷選手が流れを呼び戻してくれたおかげで勝てた試合も多々あったかと思います。
ドラフト1位で入団し、1年目に7勝。
右のエースになることを期待されていましたが、その後は伸び悩んでいる印象があった上茶谷選手。
そこで三浦監督が出した答えは中継ぎ転向でした。
コントロールが良く、力で押すのではなく丁寧に投げる投球スタイルは「先発っぽさ」を感じますし、中継ぎ転向を不思議に思ったのは私だけではないはずです。
なぜ上茶谷選手は中継ぎになったのか。
役割が変わった中で上茶谷選手にどのような変化があったのか
データから考察してみたいと思います。
中継ぎ適正~周回効果から考える~
周回効果とは「対戦が1巡するごとに打者は投手に慣れ、打撃成績が向上する」ことを指します。
打者は当然1打席目より2打席目の方が投球に慣れますし、対策もできるため、打ちやすくなるのは当然の現象ですね。
そのため、先発投手は打者を慣れさせないために工夫し、出来るだけ多くのイニングを投げることが求められます。一般的に先発投手の方が中継ぎ投手よりもより多くの変化球を投げるのはこのような理由からです。
さてここで昨年の上茶谷選手のイニング・巡目別の被打率を見てみましょう。
【2022年上茶谷大河 イニング・巡目別被打率】 初回 被打率.158 1巡目 被打率.207 2巡目 被打率.343
当然、周回効果がある以上被打率が上がるのは致し方ないですが、明確に「打者に慣れられている」ことは感じますよね。周回効果の影響を受けやすい投手であるということが読み取れます。
比較として参考までに我らが大エースのデータをご参照ください。
【2022年今永昇太 イニング・巡目別被打率】 初回 被打率.313 1巡目 被打率.234 2巡目 被打率.214 3巡目 被打率.192
はい。変態です。笑
ちょっと極端な比較にはなりますが、2巡目以降にギアを上げ抑え込む姿はまさに先発投手の鑑と言えるでしょう。
ただ裏を返せば、昨年苦しんでいたように見えた上茶谷投手も、1イニング、1巡目に限定すれば
「今永投手よりもいい投手」
であったと考えることも出来るかと思います。
そう考えると上茶谷投手の中継ぎ転向は1巡のみの投球に専念できるという観点から、極めて合理的な選択であったと思えますよね。
中継ぎ適正~ウィニングショットから考える~
先発から中継ぎへ役割が変更する過程で多くの投手は「使う球種を絞る」ということをします。
短いイニングを全力で投げることが求められ、かつ1巡しか対戦しないため、自信のあるボールに絞って投げるというアプローチをするのです。
では上茶谷選手のウイニングショットは何でしょうか。
はい。カットボールですね。
実はリーグトップクラスのカットボールを操る上茶谷投手。
カットボールの空振率のリーグ平均が約10%なのに対して、上茶谷投手のカットボール空振率は約16%。紛れもなく一級品のボールです。
さらに凄いところはこのボールを左打者にも効果的に使えること。2020年には右対左におけるカットボールの空振率でリーグトップを記録したこともあります。(空振率は14.2%)
ではこのカットボールの投球割合を比較してみましょう。
上茶谷大河 2022年カットボール投球割合:28% 2023年カットボール投球割合:33%
中継ぎになったことで、得意球であるカットボールの投球割合を増やしていることがわかります。
対右打者にあたってはさらに顕著です。
上茶谷大河 対右打者 2022年カットボール投球割合:32% ストレート投球割合:37% 上位2球種割合:69% 2023年カットボール投球割合:41% ストレート投球割合:43% 上位2球種割合:84%
上位2球種の割合が15%も増えており、得意球でごり押しが出来ていることが伺えます。
明確なウィニングショットが存在する上茶谷選手にとって、短いイニングでよりカットボールを多投できる環境はプラスに働いているように見えます。
実際に今年のカットボールの被打率は.188です。これも上茶谷選手の中継ぎ適正が合理的であったことを表しているように思います。
投球スタイルの変化 ~スライダーの有効活用~
中継ぎ適正があったことが今年の活躍に繋がっていることは述べましたが、もう一つ特筆すべき上茶谷選手の変化があります。
それはスライダーの多投です。
上茶谷大河 2022年スライダー投球割合:7% 2023年スライダー投球割合:15%
スライダーの投球割合が2倍以上に増えています。
上茶谷選手のスライダーはカットボールよりも10kmほど球速が遅く、より大きく曲がります。
ではこのボールが進化したのか?答えは否です。
上茶谷選手のスライダーの空振率は約5%。今年の被打率は.286と決して決め球として使えるようなボールではありません。
では何故スライダーの投球割合を増やしたのか。
答えは「カットボールをより生かすため」だと考えます。
では昨年の上位三球種の被打率を見てみましょう。
2022年上茶谷大河投手 上位三球種 ストレート 球種割合43% 被打率.272 カットボール 球種割合28% 被打率.273 フォーク 球種割合14% 被打率.154
昨年はスライダーではなく、フォークを第三の球種として使っていました。空振率(約10%)や被打率を見てもスライダーよりも良いボールであることがわかります。
しかし得意球であるカットボールは被打率.273と打たれてしまったことが昨年の不調の要因の一つでしょう。
これは「緩急を使えなかった」ことが要因であると考えます。
この上位三球種の球速帯は135km~145kmの間。カットボールを意識していれば、他の球種にも対応できる状態を作ってしまっていました。
そこで今年カウント球として使っているのが「スライダー」。球速帯が125km~145kmになったことで打者としてはストレート、カットボールが速く感じるようになったのではないでしょうか。
2023年上茶谷大河投手 上位三球種 ストレート 球種割合44% 被打率.132 カットボール 球種割合33% 被打率.188 スライダー 球種割合15% 被打率.286
スライダー自体は一定程度打たれていますが、ストレート、カットボールが打者に効いていることが良くわかります。スライダーが第三の球種となったことで得意球でしっかり勝負できる状態を作り出した。これも今年の好調の要因の一つではないかと考えます。
見せ球として機能し始めたスライダー。皆様も是非注目してもらえればと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
周回効果を受けにくく、カットボールを多投できる中継ぎという役割。
そして伝家の宝刀カットボールをより効果的にする「スライダー」。
これらが今年の上茶谷選手の躍進の要因と言えるでしょう。
中継ぎへ役割が変わり、新たな投球スタイルを確立しつつある上茶谷選手。
このままの投球を続け、勝ちパターンに入っていくのか。
もしくは再び先発投手として躍動するのか。
今後の上茶谷選手に注目です!
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